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記忘記 note/off note 2015-03-19



大工哲弘二枚組新作『南島通信』はじまりをまえに

いま、大工哲弘の『蓬莱行』の続編となる二枚組新作アルバムの構想中だ。昨年夏頃に話が持ち上がり、大工さんが上京するたびに膝詰めでミーティングを重ね、沖縄―東京間で音源や資料等を交換してきた。世はこぞって「配信」全盛、過去のフォーマットは悉く無用の長物に成り下がろうとしている昨今、「まったくご苦労なこった」と軽く自嘲しながらなお、ぼくにとって二枚組アルバムという表現形態はどうしても熱い思い入れが滲んでしまうようだ。それはきっと、かつて、そしていまも音楽によって豊穣な夢を見させてもらった恩恵に浴したものだけが抱く特別な感情なのだろうか。
さて、ぼくの脳裏に即座に思い浮かぶ二枚組アルバムと言えばやはり、ボブディラン、ビートルズ、ロック二大アーティストのものだ。ボブディラン『ブロンド・オン・ブロンド』に示されたフォークの多面性とロックの強靭なビートが見事に融合し結実した音楽。これこそディランが目指したサウンドの到達点の一つだと思う。ディランはこのアルバムのサウンドについて自ら語っている。「ぼくが心の中で聞いているサウンドに最も近づくことのできたのが『ブロンド・オン・ブロンド』に収録したそれぞれの歌だ。それは自由に動き回る水銀のようなサウンドだ。どんなふうに想像してもよいが、とにかく金属的で黄金に輝いている。これがぼくの特別なサウンドだ。今まではこのサウンドをレコードで作り出すことができなかった。今までもずっとギター・ハーモニカ・オルガンを組み合わせてこのサウンドを作り出そうと努力してきた。」と。「水銀のように自由に動き」「金属的で黄金に輝く」サウンドに乗って物語られるバラッドにあらわれたフォークからの移住者たちはいずれも昏く長い陰翳を曵いている。まるでいぶし銀のような佇まい。このアルバムはディランの数ある傑作アルバムの中でぼくが最も愛聴してきたアイテムだ。
そしてビートルズ。彼らは短い活動歴の中でホワイトアルバムと通称される唯一の二枚組アルバム『ザ・ビートルズ』を残してくれた。このアルバムの多彩さは当時際立ってきたメンバー四者の個性の投影であろう。当時最新機材だった8トラックマルチレコーダーの導入はさらにその傾向に拍車をかけ顕著にしたにちがいない。それゆえにだろう、このアルバムの印象を散漫と受け取り、各自の自己表出を「ビートルズ共和国」崩壊のはじまりの予兆と指摘する向きが多くいて当然、それもあながち的外れの見解とも言えまい。だが、ぼくは訳知りたちの分析を遥かに超えた、四者四様に強烈に個性を発揮しながらそれでもなおビートルズたろうとする彼らのバンドマンとしての矜持と飽くなき創造への挑戦、持続の意志により大きな感動を覚える。『ラバーソウル』以降、彼らのロックが渾身の力であらわそうとしたものこそ「多様性の調和」だったと信じる。ぼくは永遠にビートルズを、ロックの青春を追い求めてゆくだろう。
そして、ぼくがこの二大アーティストによる定盤2アイテムにも勝って多大な影響を受けた二枚組アルバムがキャプテンビーフハート&ヒズ・マジックバンド「トラウト・マスク・レプリカ」だ。「ブロンド・オン・ブロンド」同様、このアルバムを貫くバラッドの語り部も無数のホーボー、漂白者たちの群像なのだが、かれらの行動パターンときたらまったく予測不能である、こいつらの一人にのこのことくっついてったらどこに連れて行かれるかわかりゃしない。意識と無意識の間を無賃乗車で果てなく彷徨するのだから。そして彼の一統が醸すマジックサウンドは見知らぬ砂漠の町をオンボロ車でドライブするようなものだ、調整と無調の間の細い凸凹道をひたすら蛇行しながらガタガタと進む。この奇妙な揺れ具合に脳髄と身体を強く衝迫され刺戟されつづけて彼らの幻の響和国「Frownland」にようやっと辿り着くって寸法だ。しかし、響和国がその相貌をあらわすのはほんの束の間。ぼくは響和国の様子や内情をもっと知りたくて、テキヤの口上によく似たいかがわしくも無闇矢鱈と説得力に充ちた三百代言、否、彼のバラッドとその一統の醸す底なしの音楽の魔力に取り憑かれ奇妙な物語の方へ耳を攲てせっせと出向いてゆく。「これじゃ奴らの思う壷じゃねぇか」と嘆いても後の祭り。立派なジャンキーの一丁上がりである。
乏しい洋楽ロックの知見の方ばかりへ話を向けたが、この国の表現の中にもお手本にするべき仕事は数多くあるだろう。ぼくにとってその大きな一つがあがた森魚さんの『日本少年』だ。このアルバムは病弱な少年が病床で熱に魘されながら夢見た、想像上の「世界旅行記」である。昭和初年の少年が絵本等で得ただろう朧げな知識と幻覚とがない混ざった物語を多彩な音楽でくるんで創り上げた独自の世界観はけっして色褪せることなく、いまも揺るぎない。たしか、このアルバム制作が契機となって細野晴臣さん(本作プロデューサー)のエキゾチック路線が同時並行しながら発展し、ムーンライダーズ(本作全面参加)の東京発無国籍サウンドが端緒に着き、ほどなく開始されたように記憶している。あがた森魚さん、細野晴臣さん、鈴木慶一さんとその仲間たちが優れた才能と感性と粘り腰で切り拓いてくれたコンセプトアルバムの沃野の延長線上にぼくたちの『蓬莱行』も制作されたのだ。この国のポップスのマエストロたちに心から謝意と敬意を表したい。
閑話休題。『蓬莱行』が出たところで大工さんの新作アルバムに話を戻そう。収録する候補曲もほぼ決まったもののどういうわけか、なにかがひとつ不足しているような気がしてならない。そう、たったひとつだけ重要なピースが。おそらく、そのピースが埋まれば「物語」は自然に動き出すはずである。つまり、その一片こそが「物語」の扉を開く鍵なのだ。だがそのたったひとかけらがどうしても見つからず探しあぐねて途方に暮れている。もうそろそろ見つかりそうな予感だけはしきりに感じてはいるものの……。
振り返れば、2002年に同じく二枚組『蓬莱行』を制作した時もこんなふうに苦しんでいたっけ。けれども、探していた鍵となる「ことば」が見つかったあとの作業は早かったな。尤も過酷な録音作業が半年以上もずっと続いたのには些か辟易もしたが、それでもまったく迷いはなかったし、しんじつたのしかった。東京と沖縄を何往復もしながら制作チーム一丸となって「物語」が示す方へ真っすぐに進んで行けた。一期一会、出会いの音楽。あれは夢だったのかな、いまとなってそう思うこともある。そう、たったひとつの「ことば」がぼくたちを誘い導いてくれたのだ。
そのことばこそ、アルバムのサブタイトルにもなっている「パイパティローマ」だ。「パイ」は南の方向、「パティローマ」は琉球最南端・波照間島のことだ。実際に浮かぶ波照間島のさらに南方に位置する「異界」に属する無可有郷。いにしえの琉球人たちはそこに桃源の蓬莱国を想い、ニライカナイ、唯心の浄土を夢見たのである。
この幻視のユートピアを実際の歴史にあらわれた琉球、取り分け八重山諸島と台湾の人的交流、庶民大衆が辿って来た海の道に重ねて想いを馳せること、虚実の皮膜を自由に遊ぶこと、彼此を自在に乗り越えて生命が交感し躍動する「場」をあらわすこと。その作業に徹することでぼくたちの確信は深められ、あらたな「汎アジア音楽」、未来の「環太平洋音楽」の作風を描出しようとするぼくたちのデッサンに魂が込められていったのだと思う。そうだ、ぼくらは音楽の「蓬莱国」を目指したのだ。その意味で『蓬莱行』はぼくにとってもオフノートという運動体にとってもいつまでも変わらぬ最重要作なのである。
……ということはだ、今回の続編は「蓬莱国」からの通信となるのか、はたまた、「洋行帰り」となるのか。そのへんのところが実にあやふやで曖昧なのである。だが、冒頭に記したように収録曲はすでにほぼ決まっている。沖縄を代表する作曲家、宮良長包と普久原恒勇の珠玉の作品群を採り上げさせていただく、南島詩人・伊波南哲の詩世界にも新たな息吹きを吹き込もう、これまでの先人、先輩方の業績にリスペクトしながら、これまで断続的にしか発表されてこなかった大工自身のオリジナル楽曲にもあらためて紹介の機会を与えたたいと思う。サウンドプロデューサーは東京サイドに関島岳郎、沖縄サイドに上地‘gacha’一也をそれぞれ配し、東京―沖縄間で緊密に連携を取りアイディアを出し合いながら双方向で作業を進めてゆく。あっと驚くゲストも考案中だ。おそらくアルバムタイトルは『南島通信』になるだろう……。
そう、こんなふうにアウトラインはほぼ見えてきているのにまだなにかが足りないような気がしているのだ。「神は細部に宿る」というが、いま掲げたディテールをさらに微細に点検していく作業の中でにインスピレーションは舞い降りてくるのだろうか。創造の神はぼくの心のドアをノックして笑顔で訪問してくれるだろうか。まったく心許ないが5月の録音開始まであとわずか。いまは心の耳を澄ませて彼のやって来る気配を察していたいと思う。音楽が始まればきっと、大工の歌声が、あるいは南島の呂律がたくさんの魂たちを運んで来てくれるだろう。(2015.3.19)

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