記忘記 note/off note 2017-03-13
ドキュメント1989/ミュートビート [2CD] (off note / on-10)
本作はタイトル通り、1989年6月、ミュートービート充実の演奏を捉えた音響によるライブドキュメントである。ミュートビートはこの演奏から半年もしない同年暮に永い「休止」へ入ってしまうが、ここでの演奏は飽くまで力強く、重低音のリズムは魂を烈しく揺さぶり、二人のフロントは同時代のファンファーレを高らかに謳い上げる。本演奏が披露されてから28年、アルバムリリースからもすでに20年以上の歳月が経過している。
あまりに身近なエピソードで甚だ恐縮だが現在、高円寺円盤でこのアルバムがよく売れている。聞けば、ユーザーの多くがミュートビート現役の活動を知らない若い世代だという。もちろん、店主・田口史人さんの強力なプッシュと常日頃からの信用の賜だが、音楽が世代やジャンル、あらゆる枠組みを超えてつたわってゆくのはうれしい。魂のこもった音楽は普遍だ、けっして過去に埋没したりはしない、そう確信できる。同時代の「備忘録」としてこの音楽をあらゆる場所に響かせ、もっと多くの、一人びとりの心に届けたい。音像はきっと、ホワイトアウトした現在を映すバーチャルスクリーンを鋭く切り裂き、真っ赤な血汐を烈しく噴き出させるにちがいない。そう、何もかもままならぬ不自由な時代だからこそ、時代の基底をどよもすマグマのごとき大きな鼓動をつたえ、烈しく魂を衝迫するリアルな音楽を聴きたい、それだけをただひとえに念じ焦がれるのだ。(2017.3.13)
2017-05-12 15:31