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記忘記 note/off note 2017-03-24




2011年2月、『トラッシュアップ』に寄稿した旧稿です。前年より、わたしはジャズ評論家・瀬川昌久先生を司令塔とする世代を超えた老壮青三結合の縦断戦線、オフノート別働隊たる華宙舎に拠ってシリーズ「SPで綴る 二〇世紀之大衆藝能」の企画制作に寧日なく暮らしていましたが、本稿執筆はその第二弾、ナンセンスコーラスの系譜②『笑ふリズム / ナンジャラホワーズ』リリース直後にあたっていたと記憶しています。この一月後にあの「震災」は起り、東北地方に甚大な被害をもたらしました。東北で被災された方々が経験された塗炭の苦しみの万分の一にもおよびませんが、わたしたちもまた苦心作『笑ふリズム』が発売間もなく倉庫に眠ったままデッドストックになるという経済的打撃を被り、往年の大衆芸能を現在に喚び覚ます「温故知新」の検証作業は頓挫を余儀なくされたのでした。そして、この会心作もついに大きな話題とはなりませんでした。自然の猛威の前で人間のチカラがいかに無力に等しいかをあらためて思い知らされ、ただただ茫然自失したものです。いま、あの「震災」からすでに6年の歳月が流れましたが、その間に『笑ふリズム』は地道に売れつづけ、いつのまにか初回プレスを売り尽くし、現在品切れ状態です。音楽をビジネスと捉え、ヒットチャートを至上の目的としてしているギョーカイの方々にとっては実に取るに足らぬ些々たるエピソードでしょうが、永らく打ちつづく音楽不況のただ中にあって、ほとんど宣伝らしい宣伝もなく、大した話題にもならなかった未知の音楽が人々につたわってゆく現象はやはり未来を照らす明るい「兆し」であるはずです。小さな湧水も様々な障害に出会い・揉まれ・流れてゆく中で、やがて巌も砕く奔流となって大海へ注ぎ込む。同様に人の営みもまた実にささやかではありますが、日々の積み重ねによってきっと大事を為すのでしょう。たとえ、いまは微力で「小さき者」であったとしても。わたしは「音の力」を信じます。平凡の偉大さ、凡愚の一徹を信じます。これからもわたしたちの試行はつづきます、生あるかぎり。そう、「命限り有り惜しむべからず」の心意気で。

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夢見るちからーあきれたぼういずとナンジャラホワーズの「戦争」

 本誌前々号で予告したアンソロジー「SPで綴る 二〇世紀之大衆藝能」の第一弾、『樂しき南洋/あきれたぼういずと川田義雄』を昨2009年10月に世に送ることができた。往年を知るオールド世代はもちろん、「あきれたぼういず?」という若い世代の方々からの好評も得、反応は上々だ。
 あきれたぼういずと川田義雄、本作は両者が主に戦時中に遺した音源に照明を当てて一巻二枚組のアルバムに構成したものである。本作を一聴して印象に残ったことは、戦時下という思想・表現にとって最も困難な時代にあって、あきれたぼういずも川田義雄も自らの表現を貫徹するべく大健闘していることだ。浅草育ちのボードヴィリアンとしての矜持を些かも崩さず、諧謔と批評精神を全うしようと悪戦苦闘している。ときに時局に応じる素振りをみせたり、応じる振りをして皮肉まじりに時局を裏返してみたり。この時期の彼らの音楽には自由な表現とそれを統制しようとする公権力との葛藤と相克の痕跡があちこちに認めることができる。内なる自由な表現と現実の思想統制の矛盾は、かれらの表現のなかに“アンビバレンス”として吹き出している。そして、その“アンビバレンス”こそがかれらの音楽により深い陰影を与えているのである。オリジナル・あきれたぼういずの音楽がもっていた底抜けの明朗さは、当時の聴衆のみならず、現在のわたしたちにとっても大きな魅力に満ち溢れているが、暗い時代相を映し取って描かれた「その後」のかれらの作品群には明暗がない混ざった複雑で不思議な誘引力を湛えているように感じられる。ともあれ、わたしたちが歴史に真摯に学ばなければならないことは、大衆芸能家たちの屈折しながらなお、節を曲げない叛骨精神だろう。時の流れに棹さして流されず、向こう岸へと悠々と押し渡るしたたかさとしなやかさこそを。いかなる困難のさなかにも人は夢を見る。否、困難であればあるほど、人は身を焦がし世界全体を灼き尽くすほどに、豊穣にさらにしたたかに。
 読者の皆さんはナンジャラホワ−ズというグループをご存じだろうか。おそらく皆無に等しいのではないか。名前くらいは知っていても、実際にその態様を知る人はほとんどいないだろう。メンバーはミス妙子、フランク富夫、ミス洋子、フランク正夫の男女4人。関西を拠点に活動、1940〜41年の2年間に10枚のSPレコードを遺している…。このグループに関するデータはせいぜいこれくらいでそのほかの詳細がまったく不明の謎のグループである。
 この拙稿を書いている直前にようやくこの未知のグループが遺した全音源を纏めた『笑ふリズム/ナンジャラホワーズ』の編集作業を終えたところだ。本作は『樂しき南洋』につづく「ナンセンスコーラスの系譜」第2弾である。だが、仕遂げ了えてなにがある。大きな達成感は、ない。編集作業を終えたいまも繰り返し自問している。ナンジャラホワーズ。わたしたちはしんじつ、この不世出のナンセンスコーラスの「実像」に迫り得たか、と。虚しい問いかけにちがいない。この一年間、わたしたちは八方手を尽くしてなにひとつ、このグループの素顔を知る重要な手がかりを見つけることができなかったのだから。まさに「藪の中」「忽然と消えた」、としか譬えようがない。歴史は依然、「茶色い戦争」を挿んで曇り硝子の向こうなのか…。
 だが、厳然と「声の記憶」はのこされた。いま、彼女たちの歌声を聴くとき、あきれた&川田と等しく、戦時統制下に「笑ふリズム」、自由な表現を貫徹していることに驚きを禁じ得ない。萬歳をベースに浪曲・義太夫・端唄・都々逸・民謡&歌謡曲・芝居口上・声色…、諸芸「吹き寄せ」にジャズコーラスを添えて畳み込む力量はまさに桁外れ。はるか70年前に阿呆陀羅経の極上リズムに乗ってスイングする和製ジャイヴ・ミュージックがすでにこの国に存在していたのである。
 謂うまでもなく、近代歌謡曲は舶来音楽・ジャズを父とし、浪曲を母に生まれた混血児である。これに準えると、洗練されたジャズコーラスを基本に舶来音楽を多く採り入れたあきれたぼういずは「ナンセンスコーラスの父」であり、この国独自の「謡」と「語りもの」をささっと料理して彩りよく並べる手際の良さが信条のナンジャラホワーズはさしづめ「ナンセンスコーラスの母」と呼べるかもしれない。いずれにしても彼女たちがのこしてくれた音源を耳にするとき、一縷の希望を現在と未来とに繋ぐことができる。ミス妙子、フランク富夫、ミス洋子、フランク正夫。たとえ、あの戦争が4人の人生を大きく変えたのだとしても。 
 あきれたぼういずとナンジャラホワーズ、彼らの音楽に刻印された「戦争」の記憶と「抵抗」の記録をぜひともお聴きいただきたい。


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