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記忘記 note/off note 2020-03-25

フェリーニの道の上で
ゴットフリートは世界の日の出を待っている

このストラーダ第一作『山道』を久々に聴いて思い出した。本作をリリースした95年暮れに浅草木馬亭でオフノートゆかりのミュージシャンが一堂に会した『風綺寄席』なるライブを行ったことを。 当日の東京は大雪のため交通網の半分ほどが麻痺し、動員は半減したが熱い内容だった。当然のようにトリはストラーダが務めてくれたが、あのときの演奏はスゴかった。ライブが終わるとNY帰り(わざわざ空港から駆けつけてくれたのだ)の梅津和時さんが泣きながらおれの手を握り「すごいよ、このバンド。NYで見たどのバンドよりすごいよ」と語ってくれた言葉がいまでも忘れられない。尊敬する歴戦の闘士の心のこもった言葉はその後の活動への大きな励みと弾みになった。おもえばあの日。わが同時代音楽は予測不能な典型期の「挑戦」と「応戦」を宿命っけられていたのだなといまになって思わずにはいられない。いま、この音楽を聴くとき、日の出を待ちきれず、まだ暗いうちに「世界」へむかって踏み出す第一歩の恍惚と不安がない混ざった慄えるような感情がよみがえってくる。あれからちょうど四半世紀経ったのか。いま、どこを歩いているのかまるでわからない。そんな道に迷ったとき、本作を聴いて「原点」を確認する。そう、この道はきっと世界に通ずる。生きてあるかぎり、そう信じて一歩一歩、天と地の間をゆっくり・急いで歩きつづけよう、と。 2020.3.25

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