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記忘記 note/off note 2018-10-13



音盤制作の与件と予見の音楽

音盤制作を生業にするわたしにとって沖縄には何人かの恩人がいて、島うたの名プロデューサー / 作詞家のビセカツこと備瀬善勝さんもその中の一人だ。20年近く前、そのビセさんに面白いエピソードを伺ったことがある。
ビセカツさんは基地の町コザでキャンパスレコードというレコードショップを経営されているが土地柄、黒人GIが冷やかしによく訪れるという。長時間、黒人GIに店内を屯していられると他の客が入ってこれない、とはいえ、無理矢理追っ払うわけにもいかない。そんなときにはきまって某島うた歌手(あえて名は伏せる)のレコードをかけるのだという。すると効果てきめん、GIは蜘蛛の子を散らしたように瞬く間に退散すると語ってビセさんは笑い、「逆にカディカル(嘉手苅林昌)さんでもかけようものなら、連中踊り出しちゃいますからね」と真顔で付け加えた。
ちなみに歌手某氏の名誉のために言っておくと、この人は沖縄では著名な民謡歌手であってけっして下手な人ではない。ただ、沖縄大衆(特に中高年にかな)の心に切々と訴えかけるような歌唱の情調が黒人GIたちには「退屈」なものに感じられるのだろう。もしかしたら「呪文」のように響いているのかもしれぬ。エピソードの後半「カディカル」云々は、地元ラジオ局でDJを務める程の話上手でサービス精神旺盛なビセカツさん一流の願望も入り交じったリップサービスだろう。嘉手苅林昌さんがそうだったように、真顔でジョークを言うのがコザの人らしくて可笑しいけどね。わたしがビセカツのさんの話を伺って興味深くおもったのは「島うた」と一口に言っても感情の表出次第で人々の魂を「扇情」もするし「退屈」させもする唄のありようである。そう、内向きか外向きかベクトルの違いでまるっきり異なったものに聴こえるというどの音楽でも起こるであろうごくありふれた事実だ。わたしが沖縄の音楽のどこにつよく惹かれるかと言えば「大衆音楽の真実」が醸す究極のダイナミズムをごくあっさりと日常的に見せてくれるところだろう。ここで求められるプロデューサーの与件は場の空気を正確に読んで来るべき音楽の態様を予見し、それにどんなバイアスをかけて伝達するかの判断基準だ。ビセカツさん営むキャンパスレコードは70年「コザ暴動」発生地点にほど近い。レコードショップオーナーとしては迷惑でも、制作者ビセカツなら黒人GIたちの身体が自然に揺れるような音楽を発信できることが一番いい(上等!)にきまってる。

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