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記忘記 note/off note 2019-04-23



2004年『未明の歌』をリリース当時、『アックス』誌に掲載いただいたインタビュー記事のテキストです(この頃はやる気満々だったんだなぁ)。いま読み返すと赤面ものですが、まあいいか。A遠の未完成交響詞「こくう物語」を目指して日々鈍根になってゆく感性と身体を怠らず磨きながら日々精進します。 2019.4.23

制作者インタビュー

――翁二氏のCDを制作するに至った経緯をお聞かせ下さい。

ずいぶん前のことですが、知人から鈴木翁二の私家版カセットのコピーをもらいました。それで、はじめて鈴木翁二の歌を聴いたんです。そこで歌われている世界が、わたしの知っている鈴木翁二の漫画作品とあまりに密接に繋がっていることに、とても驚きました。それと、声の持っているインパクトが強烈でした。友人が「まるで犯罪者の声だ」と評したほどです。「犯罪者の声」がどういう声なのか、実際にそんなものがあるのかどうか、わかりませんが(笑)。「ひとさらいの歌だな」と妙に納得したのを憶えています。歌のレベルが、漫画家の手慰みとか余技を遙かに越えていた。わたしはもともと、翁二の愛読者で、いつか鈴木翁二の世界を音楽で表現したいと考えていました。「星の栖家」とか「透明通信」。でも、鈴木翁二の世界を最も音楽的に体現しているのは翁二自身なんです。これはもう、御本人に直におねがいするしかありませんよね。

ーーこのCDには、朗読が約半分収録されていますが、このような形になったのは何故ですか?

最初に聴いた私家版カセットのインパクトが大きかったので、それをそのまま、CD化したいと思いました。カセットは収録時間が短かくて、17分くらいしかない。それではアルバムとして売れない、もうすこし時間を稼ぐ必要がある(笑)。当初、何曲か新録するという案もありましたが、旧録と馴染まない惧れがあるので、新曲は「次回のお楽しみ」にしました。カセットのなかに「マッチ一本の話」の朗読が入っていまして、それで歌と朗読のトーストという構成を思いつきました。単に朗読を収録するのでは「作家の自作朗読」じゃないけど、ブンガク臭が出てしまうでしょう? それで、音楽と朗読のコラボレーションを考えたんです。コトバには、強い訴求力がありますが、オトにはコトバが届かないところに連れて行ってくれる「しなやかさ」、「やわらかさ」があります。カタリとオトの交響で鈴木翁二宇宙に迫りたかったんですね、きっと。

ーー制作中、何か特筆すべきエピソードなどございましたか?

漫画表現の中で鈴木翁二の世界は揺るぎないものですから、それを音楽表現に置き換えていく作業は大変だったと思います。『街道の町』のサウンドトラックを制作した関島岳郎が「映画に音楽をつける作業より難しかった」と言っていました。画が動いている映画と違って、静止した画の奥の方にある、コマとコマの間にかくれている無数の「モノガタリ」を読み込んでいかないとコラボレーションにならない。制作過程でのミュージシャンの苦闘が印象的でした。面白い話しですか? 噂に違わず、鈴木翁二は遅刻魔でした(笑)。でも、すごいのは、そこからの集中力。頭に手拭い巻いて一気呵成にいく。朗読でも何でも短時間で片付けちゃう。翁二作品にあらわれている「力ずく」の感じ。それがビンビン伝わってきた。表現者・鈴木翁二の原質を垣間見た想いです。自分だけの宇宙を造型したいという欲求というか衝動。鈴木翁二ってパンクだったんだなあ(笑)。

ーー歌手・鈴木翁二評をお願いします。

素晴らしいですね。唯一無比の歌手ではないでしょうか。ミュージシャンではありませんから、所謂、音楽的なテクニックは、ほとんど皆無に等しいのでしょうけど。それを補ってあまりある世界観があります。それから、なんと言っても「声の力」ですね。なんか震えていて、一人の声ではなくて、たくさんの人が話しているように聞こえる。しかも、深い井戸とか銀河の果て、どこかとおくから聞こえてくる不思議さがある。わたしたちは翁二の声を人間ディレイと呼んでいます(笑)。声というより「ざわめき」に近い。それに、声にドラマがあります。本来、歌にとって技術なんて関係なかったんじゃないかな。大事なことは、誰かに何かを伝えたいという止むに止まれぬ欲求というか、溢れて尽きぬ想い。それが歌の初志だったと思います。プロの歌手がとっくに忘れてしまったことを鈴木翁二は忘れません。けしてお世辞ではなく、稀有な「語り部」です。

「ウタ唄ウスズキオージ / CD「未明の歌」発売に寄せて」より
アックス40号(青林工藝舎/2004.8)


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