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記忘記 note/off note 2019-06-17


猫の時節 / 川下直広トリオ2『猫の時節 川下直広トリオ2』、本作について、昨年8月に綴ったMEMOを下記に掲げる。が、そのまえに宿酔い(大工哲弘さんと久々に深夜遅くまで呑んだのだ)の頭ですこしだけ。

本作恊働の経緯はほぼ去年のMEMOの通りだが、そんな裏事情よりもっとだいじなのは、ここに記録された音楽が湛える「過度性」の方だろう。ここに収められている音楽は、2000年のフェダイン解散から10年以上経ても〝兵士〟の軍籍を残したままだし、このあと、名手・山口コーイチを迎えてなったカルテットの名作『初戀』の鮮烈で瑞々しい〝ものがたり〟の予告もないけれども、依然として重要作であることはまぎれもない。ジャズの本性が過度的芸術なのだとしたら『猫の時節』の音楽はジャズ的というほかないし、〝フリー〟〝インプロ〟の抽象領域に〝ものがたり〟の具象をもちこんだところはもっと刮目していい。“OUR JAZZ”の発語が年を経るごとに牙を抜かれ、最初に満々と湛えていた凶々しさの水位を枯らしていったとき、このトリオ独りのみ、凶暴に猛り狂う焔のなかに叙情性の灯油を平然とぶちまけてジャズの屍を蒼く紅く燃え上がらせたのである。その意味で本作は、ジャズ永久革命を志願しつづける兵士の殉情と、世界を想いっきり抱きしめようとする刹那の行為〝速度の愛〟とが渾然とない混ざって大きな時間を描き出した傑作である。「猫の時節」に仕掛けられた時計の針は同時代の生死烈烈を哭哭と刻みながら、つねに「過度」を指すだろう。〝兵士〟の赤心と〝初戀〟の恋情がもつれ合うなんて、まるで戦場の恋歌「リリーマルレーン」みたいじゃないか。本作の黒煙をあげる猛火を現行のカルテットに投入れて、身を焦がすほどの豊穣な夢が見られたらなあ。同時代のバラッドはその夢のなかにきっと宿り浮かび上がるだろう。 2019.6.17


MEMO 猫の時節 2018

川下直広トリオ第二作となる本作は川下直広主宰・マネキネコ商会から2011年にリリースされた。オフノート作品カタログには「恊働作」がいくつか含まれていて、本作もそのなかのひとつ。これまで川下直広作品を数多くリリースしてきたのは地底レコードで、本トリオ第一作も地底から出ている。オフノートにとって地底は同業他社、いわゆるライバル関係にあるわけで、それがほとんど問題にもならず、融通し合い、即座に「恊働」を実行に移せるのが、紙切れの「契約」や既成概念に束縛されないインディーズのいいところだ。志と志の交換。むろん、このことは地底レコード社主・吉田光利さんのおおらかな人柄に負うところが大きく、感謝は尽きないが。こんな制作の裏事情というのは当事者が語らなければほとんど表には出ないだろうから瑣末ながら綴っておくことにした。
で、本作でわたしが何をしたかというと、ほとんど何もしてない。出来上がったマスターとデザインデータをプレス会社に送ったくらいかな。それと、川下さんに求められてチラシに駄文を寄せたくらいだ。こんな誰にだってできる「ガキの使い」を恩に着て、そのあとも恊働の機会をいくたびもつくってくれた川下直広さん、不破大輔さんの友情(あえてこの語を選ばせていただく)にいまでも胸が熱くなる。
チラシの文をわたしはこう綴った。

いま、ジャズの初志を聴け。
白夜の時代を駆け抜け、さらに未来を翔る持続する意志。

90年代の白夜をひたすら烈しく疾駆した砂漠の兵士たち〈フェダイン〉のフロント・川下直広。その盟友でありアングラとポップカルチャーを自在に越境・往来する未曾有の不定型オーケストラ〈渋さ知らズ〉のオーガナイザー・不破大輔。そして幻のインプロヴィゼーションロックバンド〈5000メートルプール〉リーダー・岡村太。東京アンダーグランドの拠点にしてフリージャズの発火点・入谷なってるハウスにおけるある夜の演奏を記録した本作はトリオの“いま”を生々しくつたえる。『猫の時節』、ここにあらわされた音楽たちが物語るのはいくつもの「生死烈々」、時代から時代へと烈しく生き逝ったひとたちと過ごした夜の闇の“なつかしさ”と身を灼くほどに眩しい未来への“あこがれ”とがないまざり渾然一体になったぼくたちの時代のバラッドだ。そう、同時代への「挽歌」と「未来記」。いま、ぼくたちがほしいものは逆境を契機に換える、猫のような「したたかさ」と「しなやかさ」だ。すでに忘れられて久しいジャズの初志、精神と身体がここにある。おい、友よ。川下直広トリオが未だ見ぬキミたちに贈る渾身の音の力を聴いてくれ。5年ぶりなんだ。

…いま読んでも駄文にはちがいないが、心情はこのときのままいささかも変わらない。これでいいだろう。そう自らに言い聞かせて、試みに1曲目の「ヒーリングソング」を聴いてみる。世にはこの曲名に似た〝商標〟が存在するが、肩に軽く手を置いたり優しく撫でたくらいで、傷ついた人の心が癒せるはずもない。この男たちなら傷ついて血まみれの魂でも手荒くぎゅっと抱きしめ、まるごと慰藉してしまうにちがいない。常在戦場の兵士(フェダイン)の魂がなければ「癒し」など金輪際あり得ぬことは心しておいていい。そして、本作はそんな熱い兵士の殉情に貫かれているだろう。このあと、川下直広・不破大輔・岡村太のトリオに名手・山口コーイチが合流してカルテットとなった。さらに懐深いリズムを入手してついに縁端はひらかれた。快進撃するミリタリズムの装甲車に乗って、川下直広のテナーがひたすら咆哮する。その声がおれにはいつだって「革命せよ!」と聴こえるのさ。そろそろ、川下直広カルテットの二作目が聴きたいな。2018.8.19


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