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記忘記 note/off note 2019-08-08→2018-08-08


  

唄に牽かれて

一年前のFB投稿。そうか、唄うたい・古藤只充さんと出会ってちょうど一年になるのだな(正確には古藤さんとはまだお会いしたことがなく、〝唄と出会って〟ということなのだけれど)。偶然にもさきほど、古藤只充記念すべき第一作『十二月のコオロギ』のデータ入稿を済ませたばかりだ。一年前にはまさか、古藤さんの東京ライブを企画したり、アルバムづくりのお手伝いをさせていただこうなどとは夢にもおもっていなかっただろう。「縁は異なもの、味なもの」とはこのことか。ねがわくは、東京初ライブと記念すべき第一作、古藤只充の唄声をひとりでも多くの方々と共有したい。ライブ&CD、どちらもよろしくお願いいたします。
それと、しばらくお会いしてないが、山我さんはどうしてるかなあ…。2019.8.8

今日、ふたつのいい唄に出会うことができた。

ひとつは古藤只充という見知らぬ歌手の4曲入りミニアルバム『3/4』。先日、名古屋に行ったとき、友人の高山富士子さんが梅干しとと唐辛子入り調味料と一緒に手渡してくれたものだ。「知り合いの歌手なんだけど、とってもいいから時間あるときに聴いてみて」、茶色いクラフト紙に無造作に包まれた一枚のCD。申し訳ないけれど、しばらく机の上に置いたままで半ば忘れかけていたのを今日たまたま手に取って聴いてみた。一曲目のイントロとつづく一声を聴いた瞬間、この歌手が「タダモノ」ではないことを即座に感知できた。

「夕暮れの海があとずさる 立ちこめる靄のなか 生きものの屍骸のよう 棄てられた舟の影 そして最後のカモメが一羽 姿を消すと ぼくのうしろで泣き声がする 白い膚が妖しくうねる…」(海辺のワルツ)

コトバの一つひとつにこの歌手が重ねてきたいくつもの夜が唄から沁み出している。一朝一夕にはうたえない、「強兵」というべき真にベテランらしい深い唄だ。書き損じの反古紙と思い込んでいたCDをくるんだ茶紙をよくみると中央に配された小さな丸のなかにアルバムタイトルとおぼしき『3/4』(ああ、ワルツか。全体がこのテンポに貫かれているもの)の文字、それを四方に囲むように「海辺のワルツ」「魚たちの見た夢」「人は忘れたふりをして」「十二月のコオロギ」と曲名があるのに歌手の名が見つからない(実は包装紙の四隅に小さく小さく名前の四文字がバラバラに置かれていたのだが)。急いで、富士子さんに歌手の名前を問い合わせると、古藤只充という未知の名前と共にプロフィールが添えられて送られてきた。

古藤只充 長崎県対馬市に産まれる。1971年より関西を中心にライブ活動をスタート。70年代初頭に今は伝説の大阪中崎町の喫茶店「ろうじい」を共同経営しながら音楽活動を続ける。この時期に知り合ったミュージシャンは、田中研二、古川豪、みやさとひろし、シバ、友部正人、ひがしのひとし、豊橋のジャムポット、チチ松村(GONTITI)などなど。田中研二やひがしのひとし、山本シンたちとは、九州から中国地方をライブツアーで回ることが多かった。80年代半ばで音楽と決別して介護の世界へ、2013年サラリーマン生活に別れを告げてライブ活動を再開。現在、故郷の対馬に戻って配偶者、二匹の猫に囲まれつつ、曲を作る日々。
ここ数年は対馬の自宅で年1回ゲストを招いてコンサートを開催。

ああ、やっぱりね。ひがしのひとしさんとも交流があったのか。はじめて聴く古藤さんの唄にははたしかに、2014年に逝った〝無頼のシャンソニエ〟ひがしのひとしのフレーバーがそこはかとなく漂っていたし、プロフィ―ルにずらりと名を列ねるうたうたいたちと過ごしてきた時間がくっきりと刻まれている。それに、長い休止があり、再始動があったんだな。そんな「来し方」も古藤さんのいまの唄に一層の奥行きを与えていないか。おれがおもうに古藤さんの唄がすばらしいところは、永年歌いつづけていながら唄がいつまでも瑞々しいことだ。深さを湛えながら澄む紺碧の海のごとき唄の佇まい。この人は「いま」を急いで「過去」にしてしまうような手垢まみれの言葉をうたっちゃいない。うれしいよ、こんな歌手がいて地道にうたいつづけていることが。古藤只充、おぼえておこう。どこかでかならず出会えるだろう。

もうひとつ。

今朝、ポストをのぞくと友人の音楽家・山我静さんから初ソロ作『山のあなた』(円盤 / EBD-141)が届いていた。本作のことならよく知っている。6月に行なわれた円盤のレコ発ライブも観ているからね。それなのに、そのときは肝心のアルバムはなんとなく買いそびれて、今日まで聴く機会がなかった。本作は唄とインスト全9曲で構成されたミニアルバムで、唄も演奏も山我さん一人が手掛けている。おもえば、山我さんと知り合ったのは16年くらい前、最初はアナログシンセ奏者としてあらわれ、そのあとに唄をうたい、クラリネットを吹くことを知った。だからということでもないだろうけれども、アンビエント風電子音を背景に、歌声は一塵の風のように、ひとしきりの雨のように、オトとコトバが見事に溶け合っているし、インストもまた、唄をうたっているように感じる。随所に顔をのぞかせるクラの音色も山に棲む「木の精」を感じさせたりしてすごくいい。日々の「くらし」のなかから心に響く言葉や音をよく選り出しているよ。
おれはミニアルバムという形態が好きだ。掌編には長編ではあらわせない、日常の細やかなところに手が届き、はっとさせる言葉の「ひらめき」が多くかくされているものが多い。全9曲、35分の本作がミニアルバムという範疇に入るかどうかは知らないけれども、おれの心のライブラリには良質のミニアルバムとして分類されるだろう。

それにしても、こんなにさり気なく唄や音楽がくらしのなかに置かれていては見過ごしてしまうじゃないか。そうか、そのさり気なさに気付くことが大切なんだな。ならば、心のセンサーをもっともっとピカピカに磨いておこう。日々のくらしのなかで。

高山富士子さん、山我静さん、いい唄を、音楽をどうもありがとう。 2018.8.8

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