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記忘記 note/off note 2015-03-14


音楽家・鳥取春陽と岡大介という唄うたい

トップ頁情報欄に記したように現在、岡大介さんの「かんからそんぐ」シリーズ第三弾となる新作を制作中だ。「かんからそんぐ」は若き唄うたい・岡大介が先人たちの仕事に敬意を払いつつ新たな照明を当てようとする温故知新の唄の旅であり、「ソング・リサイクル」の作業でもある。
さまざまな評価はあろうが、岡大介の作業が呼び水となって、地下水脈のように人知れず流れるこの国独自の呂律、民衆の歌声がいままさに汲み上げられようとしていることはとても重要なことだと思う。
第一作で大正演歌の粗・添田唖蝉坊とその息・知道、父子二代の業績を称えその叛骨の精神を鮮やかに現代に甦らせたし、第二作では60年代に関西で興ったフォーク運動に同伴し、高田渡、岩井宏(二人とも若くして故人だ、嗚呼)らに自作詩を提供したことでよく知られる京都在住の現代詩人・有馬敲の詩世界に自らの歌声で新風を吹き込んだ。
そして、第三作目、今回のテーマは、辻に起つ演歌師から身を興し、新興舶来音楽・ジャズの手法を換骨奪胎してこの国の大衆に見合う歌謡を創出した稀代の音楽家・鳥取春陽である。プリミティブな「書生節」と戦前和製ジャズによく表象されている初期モダーンの両極に跨がる巨星・鳥取春陽の唄世界をこの若き唄うたいがどう料理するのか興味津々である。
……と、こんなふうに制作サイドに立つ者が他人事のように記すのには理由がある。今回、わたしは録音にほとんど携わってはいないのである。いや、今回だけではない、前作も第一作も録音現場は岡さん本人とエンジニアの石崎信郎さんに任せっきりだったのだ。
先に書いた先人たちの業績に新しい照明を当てる作業は、若い人たち自らの手と感性で果さねばならない、そう考えたからだ。若い人たちが先頭に起ち、わたしたちロートルは後方に控えて支援し必要なときだけ援軍する陣形が最も望ましい。何か求められたときにだけ応えよう、そう思い定めた。だから、余計な口出しは一切しない。彼らをして自ら思うがままに歩かしめよ、だ。
じっさい、わたしは録音冒頭の短時間のみ立ち会い、すぐさま立ち去る。だが、その短い間にも音楽的にはさまざまなことが起こるからたのしい。たとえば、楽器編成。アルバムタイトル『かんからそんぐ』 のタイトルは岡さん弾く愛用のカンカラ三線に因む。
ご承知のように、カンカラ三線は物資窮乏する敗戦後沖縄の捕虜収容所の中で、空き缶の胴に寝台の棒等を棹替わりに用い、パラシュートの紐を糸にしてつくられた三絃の代用品である。謂えば、楽器とは呼べない、「楽器擬き」である。もちろん、そこにどんな苦境にあっても唄を、音楽をけっして忘れない、唄で昨日と現在の「苦しみ」を今日の「笑い」と明日への「希望」に換えてしまう沖縄庶民の底抜けのバイタリティ、したたかさとしなやかさを認めることができたとしても。
にもかかわらず岡さんは我関せず、お手製の「楽器擬き」を愛して片時も離さず、屋内野外問わずステージ上でひたすら多用する。今回の録音もタイトル通り「かんから」がメインである。そう、細かいことには拘らない自由な感性、瞬時も常識にとらわれない型破りをわたしはしんじつ好む。
だから当然、録音ではあっと驚くことが平然と起こる。カンカラ三線とピアノのアンサンブル。南島の陽性が生んだ調弦もままならぬ不自由なサンシンモドキと西洋文明の権化のような三つ足で佇つ「平均律」お化けとの出会いはきっと相克でもなく調和でもないだろう。だが、名状し難い奇妙な感覚だけは確実に残る。やたらと大袈裟に謂えば紳士淑女たちが群れ集うダンスホールに街頭演歌師が一人 いきなり紛れ込んできたような佇まい。そして、その音像は「これぞニッポンの音曲、エーゾエーゾ!」とばかりに五官の奥まで土足でずかずかと踏み込んでくるのである。
おそらく岡大介自身、そのことを自覚化したり意図したりせず、唄うたい自らの欲求に従ってこの形態を無意識裡に選択したにちがいない。
しかし、思えば鳥取春陽たちが目指したものの原型がこの一見蛮行とも思える恣意的な演奏行為の裡に浮かび上がってはこないだろうか。プリミティブとモダーンの葛藤と止揚の痕跡、無意識の集合としての大衆歌謡、その原初の姿が。
どの曲も録り直しナシの1テイク、快速で進む岡さんの横紙破りなネオ・春陽に接して「うーん、この国の大衆歌謡の奥深さよ、オレももっと学習せねば」と思っていた矢先。偶然にも未知の菊池清麿さんよりご連絡いただく。驚いた。菊池さんは『『さすらいのメロディー 鳥取春陽伝 日本流行歌史の一断面・演歌とジャズを駆け抜けた男』(郁朋社/1998)の著作を持つ伝記作家であり音楽研究家である。まさにちょうど書棚で眠っていた本書を取り出して再読しようと思っていたのだから。菊池さんのご用件は只単に弊社リリース『ニッポンジャズ水滸伝』中のクレジットについてのお問い合わせであったのだが。これも偶然か必然か。
しっかし面白いねぇ、岡大介という唄うたい。この男の無意識の歌声と音楽にはこの時代になにかを「召ぶちから」、誘引力があるのかもしれない。

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