知られざるもうひとつの風狂伝説
1960年代、地元・マルテルレコードに残した貴重音源を集成した本作は、
風狂の謡人・嘉手苅林昌の真実をつたえ、島唄黄金時代の伝説を物語る。
唄い来たり唄い去るカデカル節、一世一代の名唱がいまここによみがえる!
風狂の謡人・嘉手苅林昌が1960年代、地元・マルテルレコードに残した音源を集成した画期的アンソロジー。マルテルレコードは沖縄笑芸・ワタブーショーで知られる稀代のボードヴィリアン・照屋林助が主宰した沖縄コザ(現・沖縄市)を拠点にしたインディレーベル、小規模ながら、制作 / 監督に知名定男(ネーネーズ・プロデューサー)、仲本興次(ワタブーショー・オリジナルメンバー)、照屋林賢(りんけんバンド)らを迎えるなど大いに気を吐いている。これまで嘉手苅林昌の歌唱は、1970年代に竹中労監修の下、制作されたLP30数枚におよぶ島うたアンソロージをはじめ、膨大な量の音源が紹介されてきたが、ほとんどが1972年「本土復帰」以降の本土メジャーでの録音 ばかり、それ以前の地元録音となると皆無に等しい有様だったが、ここに「白眉」とも言える名演が満を持して姿をあらわすこととなった。本ディスクで聴ける嘉手苅林昌の唄三絃は、地元の気軽さからか、いつになくリラックスしていて、飄々と翅のように柔らかく軽やかで、持ち前である変幻自在なアドリブ唱法においてもその風狂ぶりを遺憾なく発揮している。林昌終生の相方・大城美佐子とのコンビも本録音が嚆矢となったことも特筆しておこう。まさに嘉手苅林昌、一世一代の名唱がいまここによみがえる。待望のマルテルレコード復刻シリーズ第一弾! 藤田正監修 2019年作品
嘉手苅林昌の狂歌
音楽プロデューサー・藤田正さんがまとめてくださった嘉手苅林昌が地元・マルテルレコードに残した名演集を繰り返し試聴している。世界大衆音楽の心臓部・ブルーズフィーリングに通底する「島うたの情」にただただ痺れ、衝迫される。70年代、叛骨のルポライター・竹中労は沖縄〝島うたの豊穣〟を本土に広く紹介する際、その支柱たる嘉手苅林昌の唄世界を〝海〟〝恋〟〝戦〟の三大テーマに集約して括った。南島歌謡をめぐる70年代の時代的制約の中で、竹中労が示した島うた理解は圧倒的に正しかっただろう。けれども今日、竹中の労作業に先行する地元・マルテル音源を聴いて、そこに記録された嘉手苅林昌の歌唱にわたしは別の印象を抱いた。嘉手苅林昌の唄世界は畢竟、〝狂〟あるいは〝夢〟に収斂されてゆくのではないか、と。この仮定は、竹中が打ち立てた三本柱にもうひとつ、四本目の柱を付け足そうというのではない、ただ〝海〟〝恋〟〝戦〟の三つの命題を含む人と自然の営み・諸現象を顕現する根本法則・作用こそが嘉手苅の初期歌唱につよく表出される〝狂〟であり〝夢〟なのではないかと愚考しただけである。が、名は体をあらわす、嘉手苅林昌をして「風狂の謡人」と呼ぶ所以か。大衆的無意識の回路、〝ナンセンス〟はかならず、〝9センス〟(悟達)に通ずるだろう。ならば、嘉手苅林昌風狂無頼の歌声が四海をおし渡って国際艶歌の根拠地に進駐し〝路地裏のヘビーローテーション〟(中川敬)になる日がきっとやってくる。世界中のダウンタウン、陋巷に「下千鳥」南島ブルーズの蒼い翳が妖しく揺曳し、「国頭大福」の自在にシンコペートするラグタイムが響きわたる至福の光景をひたすら夢想するのである。三千世界の鴉を殺して鳴り響き鳴り渡る嘉手苅林昌の狂歌を聴け。
2019.2.6 神谷一義(ディスクアカバナー)
1.下千鳥
2.恨みの嵐
3.ムエー小節 with 大城美佐子、比嘉ケイ子
4.真心の花 with 上江洲節子
5.国頭大福 with 大城美佐子
6.サラウテ口説
7.敷島タバク
8.よう加那よー
9.ダンク節
10.川平節 with 大城美佐子
11.十番口説
12.宮古根・山原手間当 with 大城美佐子
13.かいされー(ヂントーヨー) with 大城美佐子
14.取納奉行
15.金細工
16.いちゅび小
17.浮世口説
18.辻口説
音源提供:照屋楽器店(マルテルレコード)
監修:藤田正(マルテル・シリーズ企画編纂者)
解説:藤田正
[試聴]
5.国頭大福 with 大城美佐子
■ 商品説明
知られざるもうひとつの風狂伝説。1960年代、地元・マルテルレコードに残した貴重音源を集成した本作は、風狂の謡人・嘉手苅林昌の真実をつたえ、島唄黄金時代の伝説を物語る。唄い来たり唄い去るカデカル節、一世一代の名唱がいまここによみがえる!マルテルレコード復刻シリーズ第一弾!藤田正監修
■ 商品仕様
製品名 | TR-002 島唄黄金時代の嘉手苅林昌 / 嘉手苅林昌 |
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型番 | TR-002 |
JANコード | 4571258157083 |
メーカー | ディスクアカバナー / てるりんレコード |
製造年 | 2019年 |