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OK-3 ニッポンジャズ水滸伝 天之巻/V.A. [4CD] 


「SP音源で綴る 二〇世紀之大衆藝能」シリーズ 3
ニッポンジャズ水滸伝 天之巻/V.A.



天の刻。つくりかえよ、とジャズは言った。
大正時代から昭和初年。ニッポンにおけるジャズ黎明期、群雄割拠したマイナーレーベル作品群から100曲厳選して4枚のCDに収録。 ジャズエイジたちの息吹を生々しく伝える画期的作品集。未だ知られざる大衆音楽裏面史が鮮やかに浮かび上がる。豪華108頁ブックレット付。 監修:瀬川昌久。2012年作品。

『ニッポンジャズ水滸伝』制作に当たって/瀬川昌久
『ニッポンジャズ水滸伝』と題するこのアルバムは、戦前日本の大衆音楽レコードの中から、所謂マイナー・レーベルから発売されたジャズ風の音楽を選び出して、5 つのテーマに分けて、収録したものである。この数年来日本の戦前──大正・昭和年代に発売されたジャズソングや流行歌のレコードに対する関心が非常に高まってきた。大正・昭和の時代をモダン文化の揺籃期と捉え、当時の大衆音楽にモダンな影響を与えたジャズを日本人がいかに受け入れ発信したかをレコードを通じて復刻する企画が盛んになってきた。そして現存するレコード会社の中で、戦前から活発に活動を続ける大手のレーベル4 社(ビクター、コロムビア、キング、テイチク)が昨年来相次いで、復刻のCD アルバムを発売して、大きな話題を呼ぶに至ってる。そこに収録された音源の多くは、これら大手のレーベルが戦前昭和の年代に発売したSPレコードによるものである。
しかし日本の戦前レコード業界の歴史を仔細に観察すると、明治、大正、昭和年代にかけて、実に多数の群小規模の会社が、それぞれのレーベル名義をつけて、レコードを発売してきた。
特に昭和初期から昭和16 年の日米開戦に至るまでの十数年間は、数十種類のレーベル名義が出現、統合、消滅を重ね乍ら、各種類の大衆音楽レコードを市場に輩出しており、その中には、ジャズを始め西欧のポピュラー音楽を多様な手法でとり入れた優れた内容のものが多い。その全ては戦争統制令で姿を消してしまった。假に今、消滅したレコード会社製品をマイナー・レーベルと総称するならば、本アルバムは、戦前マイナー・レーベルによるジャズ・ポピュラー音楽を集大成した初企画といえるだろう。
これら4 枚のCD に収録された100 曲をきいてみると何れもメジャー・アーティストとは違う個性的な面白さを感ずる。いわばマイナー・レーベルの義賊が100人大手外資系レーベルに討ち込みをかけた音楽的意気込みを察してお楽しみ頂きたい。


DISC-1 ジャズソング篇―主として欧米のポピュラー・ソングを歌った25曲。
DISC-2 ジャズバンド遍―主として欧米のジャズ・ポピュラー音楽を器楽で演奏したインストルメンタル版25曲
DISC-3/1 ダイナ・コレクション篇―戦前日本で最も広く愛好されたジャズ・ソング「ダイナ」の歌唱と演奏の各社レコードを14曲。
DISC-3/2 書生節系ジャズ・ソング篇―大正から昭和始めにかけて非常に流行した書生節を歌った芸人たちによるジャズソングの歌唱11曲。
DISC-4 邦楽ジャズ篇―日本の古謡・端唄・民謡などは、西洋音楽流入期から和洋合奏されたり、ジャズ風編曲でダンス音楽として演奏されたり歌われたりしたそれら「邦楽ジャズ」を25曲。 全100曲収録


豪華執筆陣 :
『ジャズ水滸伝』制作に当って 瀬川昌久(ジャズ評論家・本作監修)
初期レーベル考――関西を中心としたSP盤興亡史 山崎整(神戸新聞文化財団常務理事)
ジャズ巷談 /ニッポンジャズ水滸伝序説 口演 相倉久人(音楽評論家)
対談 制作者は語る  ニッポンのジャズエイジたち 瀬川昌久(ジャズ評論家・本作監修)×杉本孝一(SPコレクター・本盤覆刻)
あらたな都市音楽の誕生 大谷能生(音楽家)
初期ジャズバンドの構成 杉本孝一(SPコレクター)
モダンニッポン-ダイナと書生節ジャズ 細川周平(音楽評論家)
邦楽とジャズの出会い 古川武志(大阪市史料調査会・大阪樂団顧問兼指揮者)
音楽がおわってはじまるものがたり  渕上純子(歌手・ふちがみとふなと)


監修:瀬川昌久


[試聴]
"ジャズソング篇"ダイジェスト




OK-3 ニッポンジャズ水滸伝 天之巻/V.A. [4CD] 

価格:

5,400円 (税抜 5,000円)

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Disc-1 JAZZ JAPONICA [ジャズソング篇]
1. 凸凹人生A Gay Caballero (長谷川顕)
2. オヽいやOh! Monah (長谷川顕、ミスタイヘイ)
3. 毎朝コーヒをCoffee In The Morning And Kisses In The Night (スリーシスターズ)
4. 杯グラスをあげてStein Song (ブルーボーイズコーラス)
5. コロラドの月Moonlight On The Colorado (ブルーボーイズコーラス)
6. 煙草屋の娘 (ニットーリズムボーイズ)
7. 戀人がほしい (ニットーリズムボーイズ)
8. 南京豆賣りEl Manisero (The Peanut Vendor)(田中福夫)
9. 君を慕ひてI’m Following You (田中福夫)
10. 雨の中に歌ふSinging In The Rain (ジョウジ・マキ)
11. バルセロナBarcelona (チェリー加美)
12. 青空My Blue Heaven (メリー・フジタ)
13. ユクレルベビーUkulele Baby (小林婦美)
14. キューバの戀歌Cuban Love Song (江戸川蘭子、ヴォカルトリオ)
15. キャリオカCarioca (マイラッキーボーイ)
16. ラ・クカラチャLa Cucaracha (マイラッキーボーイ、女性デュオ)
17. 瀧の傍にてBy A Waterfall (三上静雄)
18. 夢の白帆 (ブルーボーイズコーラス)
19. あこがれの君J’ai Deux Amours ブルーボーイズコーラス
20. 今晩逢って頂戴な ブルーボーイズコーラスズ
21. 巴里の屋根の下Sous Les Toits de Paris テノール濱口淳、タップダンス中村滋
22. 巴里の屋根の下C’est Pas Comme ca ソプラノ井上起久子、タップダンス中村滋
23. おゝドンナ・クララOh Donna Clara 宮下昌子
24. 薔薇のタンゴTango Delle Rose (Tango of Roses) ミスタイヘイ
25. A Little Coffee (小サナ喫茶店) In Einer Kleinen Konditorei 鐵假面

Disc-2 JAZZ、る。 [ジャズバンド篇]
1. St. Louis Blues (セントルイス・ブルース)(Cherryland Dance Orchestra)
2. Hot Ice (熱い氷)(Cherryland Dance Orchestra)
3. Canadian Capers (カナダの祭り)(Cherryland Dance Orchestra)
4. Shanghai Lil (上海リル)(Cherryland Dance Orchestra)
5. Marta (マルタ) Marta, Rambling Rose Of The Wildwood (Cherryland Dance Orchestra)
6. グディ・グディGoody, Goody (フラターニティ・シンコペーターズ)
7. ダラス・ブルースDallas Blues (フラターニティ・シンコペーターズ)
8. Bugle Call Rag (ビューグル・コール・ラグ) (Center Dance Orchestra)
9. イエス・サー・ザット・イズ・マイ・ベイビーYes Sir, That’s My Baby (エンパイヤー・ジャズバンド)
10. ティ・ティ・ナTitina (エンパイヤー・ジャズバンド)
11. ピーナッツベンダーEl Manisero(The Peanut Vendor) (H. O. Jazz Band)
12. 私の青空My Blue Heaven (ウエスターン三味線アンサンブル)
13. おゝスザンナOh! Susanna (ウエスターン三味線アンサンブル)
14. That’s Little Baby Of Mine (私の坊や) That Little Boy Of Mine (
15. Blues In My Heart (憂鬱な愛人) Cherryland Dance Orchestra
16. Fiesta (お祭り気分) (Cherryland Dance Orchestra)
17. ためいきSigh And Cry Blues (サムカトーダンスアンサムブル)
18. 荒城の月 (サムカトーダンスアンサムブル)
19. 愉快な牛乳賣りThe Alpine Milkman (オーゴンダンスオーケストラ)
20. ジョウリー・シングレッスJolly Jingles (S.N. ジャズバンド)
21. モンパリーMon Paris (Ah ! Qu’il Etait Beau Mon Village) (太平ジャズバンド)
22. ハレルヤHallelujah (太平ジャズバンド)
23. Lady Of Spain (スペインの姫君) (Cherryland Dance Orchestra)
24. オリヱンタルダンスDanse Orientale (トンボサロンジャズバンド)
25. キャラバンKaravan (トンボサロンジャズバンド)

Disc-3 MODERN NIPPON [ダイナと書生節篇]
1. ダイナDinah (田中福夫)
2. Dinah (ダイナ) (鐵假面)
3. Dinah(ダイナー) (Cherryland Dance Orchestra)
4. ダイナDinah (P.C.L. ジャズバンド)
5. ダイナDinah (ジョー奥村)
6. ダイナーDinah (宮下昌子)
7. ダイナDinah (スリーシスターズ)
8. ダイナーDinah (テッド・マキ)
9. ダイナーDinah (トンボ・ブルー・ボーイズ)
10. ダイナDinah (ウエスターン三味線アンサンブル)
11. ジャズ六大學(上) (藤尾淳、加美可那子)
12. ジャズ六大學(下) (藤尾淳、加美可那子)
13. 感傷のうたげ(上) (静田錦波(解説)、丸山和歌子、シキ皓一、トニー相良)
14. 感傷のうたげ(下) (静田錦波(解説)、丸山和歌子、シキ皓一、トニー相良)
15. アラビヤの歌Sing Me A Song Of Araby (東一聲(帝キネ専属))
16. 青空My Blue Heaven (東一聲(帝キネ専属))
17. ジャズが鳴る (東一聲(帝キネ専属))
18. ハンドバックモダン (東一聲(帝キネ専属))
19. カフヱー行進曲 (東一聲、東八重子)
20. アラビヤの唄Sing Me A Song Of Araby (石田一松)
21. モンパリMon Paris (Ah ! Qu’il Etait Beau Mon Village) (石田一松)
22. 濱邊の唄Hallelujah (太平ジャズバンド)
23. 青空My Blue Heaven (糸井光彌)
24. アラビヤの唄Sing Me A Song Of Araby (糸井光彌)
25. 當世モガモボ (糸井光彌)

Disc-4 AZZ EXOTICA[邦楽ジャズ篇]
1. 小原節 (NO樂團)
2. 野崎村 (NO樂團)
3. 新内流し (NO樂團)
4. 三十三間堂 (NO樂團)
5. モダンはるさめ (NO樂團)
6. ダンスポッポリー (NO樂團)
7. みなと音頭 (タイヘイダンシングジャズボーイズ)
8. 大阪音頭 (タイヘイダンシングジャズボーイズ)
9. 佐渡おけさ (タイラエンドヒズサロンジャズオーケストラ)
10. 春雨 (タイラエンドヒズサロンジャズオーケストラ)
11. 道頓堀メロデー (ソプラノ上野君子、テナー尾久田龍一)
12. 山中節 (ソプラノ加美一枝)
13. 草津節 (内海一郎)
14. 佐渡おけさぞめき (松本丈一、千歳家千代子)
15. 月華撰 (日の丸ジャズバンド)
16. 活惚 (日の丸ジャズバンド)
17. 奴さん (金馬ジャズバンド)
18. 新磯節 (金馬ジャズバンド)
19. 支那楽 (松竹キネマ京橋松竹管絃樂團)
20. 野崎村 (ニットー和洋樂團)
21. 元祿花見踊 (ニットー和洋樂團)
22. 勸進帳 (ニットー和洋樂團)
23. 越後獅子 (ニットー和洋樂團)
24. 鷺娘 (ニットー和洋樂團)
25. 小鍜治 (ニットー和洋樂團)




MEMO ニッポンジャズ水滸伝 2018

本シリーズ(瀬川昌久監修)はこの国における舶来音楽・ジャズの初期受容に照明を当てて編んだ大衆音楽アンソロジーです。2011年から作業を開始し「三部作」を完結するまでにおよそ5年の歳月を要しました。本年2月、わたしはこのように綴りました。

本作はSPレコードに記録された戦前ジャズの覆刻です。わたしにとって、新しい音楽を制作することと過去の埋もれた音源を「覆刻」することは等価です。この二つの作業が車の両輪のようになって同時代音楽は牽引されていくとおもっています。SPレコードは単なる「懐古趣味」や「骨董蒐集」の対象ではなく、わたしたちが「現在」という時間をより深く読み解くための第一資料と解すべきでしょう。そう、「温故」はかならず「知新」に到らねばならない、そう固く信じて疑いません。いまからおよそ80年前、群雄割拠したマイナーレーベル梁山泊に集結した英雄好漢・有名無名のジャズエイジたちの物語はきっと、わたしたちの進むべき方向を掌を指すように示唆してくれるはずです。ぜひご一聴の程を、と切に乞う次第です。
2018.2.5

そしてさらに遡って、2012年5月に綴った拙文です。

天の刻。つくりかえよ、とジャズは言った。

この春、オフノート/華宙舎より久方ぶりの新譜を刊行する運びとなった。
ここで強調するまでもなく、昨今の音楽不況はさらに熾烈を極め、右を観れば廃業、左を向けば休業とインディーズ稼業も青息吐息のありさま。わがオフノートもひとり安穏で過ごせるはずもなく、ここしばらくは制作現場からも遠離り、思うように新譜をつくれぬ苦しみに昼夜呻吟するのみ。久しぶりに新譜が出ると言ってもちろん、慢性的赤字経営が解消したわけではさらさらなく、今にも落下しそうな低空飛行に気を弛める暇もない。だが「オレだけではない、誰にとってもいまは生きにくい時代なのだ」と自らに言い聞かせ励ましながら毎日をひらすら懸命に生きている次第。だからこそ、筆舌に尽くせぬ困窮の最中にあって久々の新譜を世に問うことができる喜びは大きい。しかも、満足のいく自信作ができたことが喜びをさらに相乗させるのか、この下ルンペンの暮らしぶりにもかかわらず、ほんの束の間、爽快な気分を満喫しているのだが…。

新たな詩人よ
雲から光から嵐から
透明なエネルギーを得て
人と地球によるべき形を暗示せよ
宮沢賢治「生徒諸君に寄せる」1927年

なぜいま、『ニッポンジャズ水滸伝』なのか? ぼくたちが1920年代から40年代にかけての初期邦人ジャズを4枚組3巻のアンソロジーとして纏めるに到った動機を物語れば多岐に亘る。だが目的は明瞭にただひとつ。大正デモクラシーのただなか、ダンスホールやカフェを拠点に澎湃として湧き起こったニッポンジャズ創生期から太平洋戦争の激化に伴い、「敵性音楽」としてジャズが一旦中断されるまでの約20年あまり。この国におけるジャズ興亡史、その揺籃の瞬間から青春時代を丹念に記録することでもうひとつの近現代史はみえてくる。戦争・震災・経済不況・また戦争…と歩んだこの国の近現代史の谷間をひたすら健気に生き抜いた庶民の哀歓、有名・無名の大衆芸術家たちの心意気をこのアルバムに閉じこめよう。
さらに言えば、メジャーレーベルの音源を一切使わず、マイナーレーベルの音源ばかりを頼ってアルバムを構成しようとする暴挙にも相応の理由はある。ではなぜ、マイナー篇なのか?? この国のベルエポックを謳歌するかのように群雄割拠した無数の大衆音楽梁山泊を舞台に繰り広げられるジャズエイジ、市井の好漢たちのものがたり。そこにはついにこの国の大衆音楽史にはあらわれなかった生き活きとしたジャズの青春群像があり、いまから遡ること、およそ90年から70年前。その時点でおこなわれた試行と錯誤の連続こそ、今日の滔々たる大衆音楽の流れ、その底流を形成しているのではないか、そう考えたからにほかならない。
この国の戦後大衆音楽が洋楽一辺倒で突き進み、自らの歌声を喪って久しいこの地平にもういちど、夢魔の彼方から先人たちが奏でていた甘く淫らな自由な呂律を喚び戻すのだ。あまりに重苦しい重力の法則から「音楽」を解放すること。盲目な衝動から動く「世界」を美しい構成へと変えるために。そうだ、いつでも危機は契機。誰にとっても生きることが困難ないまだからこそ、この国の光と闇を一散に駆け抜けたジャズエイジたちのものがたりを描ききらなければならない。ゆえに「ニッポンジャズ水滸伝」。ぼくたちはきっと、瀕死且つ最高の大衆音楽アンソロジーを編むことができるだろう。
第一弾たる本編『天之巻』ではタイトル通り、「ジャズ」という舶来音楽がこの国の大衆文化とその担い手たちに与えた「天啓」とも言える絶大なインパクトがどのようなものだったかをつたえようと心懸けた。
DISC-1と2にはジャズソングとインスト音楽の名演・迷演を選りすぐり、それぞれ収めた。歌唱と器楽演奏を通して聴くことでニッポンジャズの原基がくっきりと浮かび上がるだろう。DISC-3では陋巷から生まれたプリミティブな「書生節」とその対極にあるモダンな舶来「ダイナ」の対置の中から、この国の大衆文化、モダンニッポンのパースペクティブを抽出することを試みた。さらにDISC-4では邦楽とジャズが合体した元祖フュージョンミュージックを収録。まさにファーストコンタクト、異文化間の出遇いの記録。異種交配のサンプルを示すことで、この国におけるジャズの受容がどにようになされ、ひいてはこの国の大衆文化がいかに醸成されていったかを具に考察した。
本編を聴いてくれたキミはどのように感じただろうか。ともあれ、ぼくたちはアルバム全体を通してかつての先人たちの営みに想いを馳せ、この国の大衆文化、百花繚乱の青春の一端なりとも活写し得たとおもう。本編をぼくと等しく困難な時代に「インデペンデント」を志し、いまこの瞬間も悪戦苦闘をつづける同志たちと現在と未来に出遇うだろう音楽を愛するすべての友人たちに捧げたい。
最後に予告である。本アンソロジーはさらにつづく。次回「地之巻」ではジャズが育まれた市井陋巷にさらに奥深く岐け入る。ダンスホール、カフェ、劇場…、雑多な人々が渦巻く混沌の中から「自由」を前触れる鼓動はどのように高鳴っていったのか、をルポルタージュしよう。そのあとに待っている「人之巻」では、この国のジャズエイジを彩った有名・無名の好漢たちの銘々伝を繋ぐことでさらに“大きな時間”を描き出せたら、とおもう。そして、ぼくたちのものがたりは「ジャズ水滸伝」から「ポピュラー三国志」へと継走してさらに先へ急ぐだろう。過去と未来を繋ぐ音楽をさがす旅路は一向に終わりそうにない…。
2012.5.(TRUSH UP 転載)

「天の時は 地の利に如かず。 地の利は人の和に如かず。」
この言葉は天・地・人の三拍子が揃わなければ物事の成就は為し得ないことをおしえてくれていますが、さらに音楽が起こり・広まり・定着してゆく「与件」をもつたえてくれているようにおもえてなりません。この不変の真理に従えば、わたしたちにできることはまだまだありそうです。「音楽の与件」を踏まえて「予見の音楽」に突き抜けること。そのひとつの道標として本作をお手元に置いてお聴きいただければ制作関係者の一人としてこれ以上の喜びはありません。先に逝った友が残してくれた言葉、「まだ避けられる未来を見つめる目を鋭くし得るものは回想である」と。与えられた猶予をただひたすら過程に奮迅して斃れて熄めばそれでよし。せめてその間は出たとこ勝負のアドリビトゥム「ジャズ的」にいきたいと希っています。本アンソロジーに登場するジャズエイジ、市井の好漢たちのように。 

2018.8.29 神谷一義(華宙舎同人)

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