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記忘記 note/off note 2019-02-13

 

半年前の旧稿です。いま手元にはアルバム一枚分の鉄砲博三郎師未発表音源がある。この舞台音頭「ケレン詠み」のベーシックトラックは永年手つかずのまま、ずっと眠らせてきたものだ。博三郎師は今年で御齢90。よし、今年こそはこの音源を仕上げよう。地元河内勢&オフノート精鋭合作によるわれらがオンドシンジケートを復活させたい。大衆藝能最深部の鼓動をづたたび喚び起こし、森羅万象を励起しながらいまを揺らし踊らすのだ。そしてその指揮官はかならず音頭師・鉄砲博三郎師、その人であらねばならない。 2019.2.13

MEMO 音頭師 2018

本作は現役最古参の音頭取・鉄砲博三郎師(御齢89)初CDアルバムとして2012年に制作された。河内在来の音頭に当時流行していた浪花節の節調を採り入れて現代河内音頭の礎を築いたのは初代会主・太三郎を筆頭とする初音家衆だが、音頭を大阪ローカルなものから一躍「全国区」へ押し上げた最大の功労者が鉄炮光三郎である。1961年に発売されたEP『民謡鉄砲節』の大ヒットによって河内音頭は広く人口に膾炙し世間の所有に帰したのだから。鉄砲節の革新的なところは従来の音頭のリズムにジャズ等外来のリズムを採り入れてその運びをリニアにしたこと、音頭取りの「取り口」の数だけ厖大にあった「節」をEPというかぎられた収録時間に合わせて整除したことが挙げられよう。つまり、鉄炮光三郎が目指したのは河内音頭の「定型化」であり「一般化」なのだが、ここにこそ鉄炮光三郎の功罪が集中していると言っていい。むろん、鉄炮光三郎が「鉄砲節」で試みた音頭の改革がなければその後の河内音頭百花斉放の快進撃はなかっただろう。その意味で鉄炮光三郎を音頭最大の功労者として筆頭に挙げることに躊躇はない。実際、『民謡鉄砲節』はよくできている。わずか4分足らずの所要時間のなかで採用された「節」のいくつかを身体に染みこませて覚えさえすれば、2、30分におよぶ長尺の「段もの」でも澱みなく一席読み切ることができるのである。
とまれ、この『民謡鉄砲節』の大ヒットによって「鉄砲節」は河内音頭の代名詞となり、従来の「櫓」を離れ、「劇場」「寄席」へと進出してゆく道を拓いた。出世間からみれば「鉄砲節」は大きな成功を収めたわけだが、ここに陥穽があったのもまた事実だろう。主戦場を「野外」から「室内」に移したことによって、河内音頭に本源的備わっていた「野趣」がなくなり、フォークロアのもつ「多様性」が消え去った。これはちょうど、森鴎外らがおこなった中世説経を近代小説に置き換える作業に酷似していないか。そして、「鉄砲節」最大の禍根は商業的成功による劇場進出で「踊りの輪」という音頭を音頭たらしめる磁場を喪ったことに求められれよう。「鉄砲節」はヒットという音楽産業の論理に回収され、大衆と交感する「身体」の回路を固く閉ざしてしまったのである。
さてこのへんで本作の主役・鉄砲博三郎師に話を戻そうか。博三郎師と光三郎は従兄弟関係である。二人とも青年期に初音家の門を叩き、そこで多くの薫陶を受け、修行に励んだことも一致している。そして、博三郎師も光三郎同様に「鉄砲節」を操るのである。だが「志は一つ、ゆく道は同じからず」、博三郎師は「鉄砲節」の劇場進出を横目で見ながら「櫓」をけっして離れることはなかった。そこには音頭取りの矜持と共に、櫓の下には多くの財が埋まっていることを熟知してたからにちがいない。光三郎の音頭が「聴かせる」「見せる」ことに主眼を置いたものなら、博三郎師のそれは「踊らす」音頭だ。博三郎師本人に聞こう。

 いまの河内音頭の踊りはマンボ踊りが主流です。跳ねる踊りやな。マメカチいう昔ながらの踊りがあってそれを土台にして若い踊り子さんらが新しく始めたんがマンボ踊りやな。昭和四〇年代の終わり頃やったかな、景気がいちばんいい頃に大阪駅前で十何年つづいたおっきな盆踊りがありましてな。大阪駅前やからな、場所柄、大阪中の上手い踊り子さんらが仰山寄って来るんやね。マンボ踊りは各地の上手な踊り子さんらが競争的に始めて、それが大阪市から河内全体にだんだんと広がって流行っていったもんなんですわ。踊り子が皆上手やからね。そらぁもう、飛び上がって踊ってたからな。音頭取りがゆっくりとろい音頭取ったら嫌がって踊ってくれへんからね。こっちも乗せんといかんからのんびりとかまえてられん、音頭のテンポをどんどん上げていくわけですわな。まぁ、言うたら踊り子さんらの要求に音頭取りが応えてそれでだんだんマンボなっていったんですわ。昔の音頭いうたらもうゆっくりしたおとなしいもんでしたからな。それをもうひとつ変えたんがマンボやった。(本作所収「 鉄炮博三郎メモワール 音頭師一代」より)

そう、鉄炮光三郎の音頭がジャズなら、鉄砲博三郎の音頭はさしずめラテン音楽だ。ジャズは世界を席巻して20世紀最大の芸術にまで一気に階段を駆け上がったが、ラテンはけっして「踊りの場」を手放さなかっただろう。そこから自然に音楽が湧き上がることを熟知していたからだ。本作はスタジオ録音だが、鉄砲博三郎一代かぎりの「マンボ鉄砲節」の真髄が凝縮されてると言っていい。伴奏陣は、往年の宮川左近ショウの名曲師であり『民謡鉄砲節』のイントロを手掛けた暁照夫師、初音家四代目宗家・初音家秀若師(両師とも故人だ!)を筆頭に初音家ゆかりの人々と、わがオフノートオールスターズの同時代合作のオンドミリタリズムである。そして、われらがオンドシンジケートの頂点に立ち、「踊れ、踊れ! 」と号令するものこそ、音頭師(オンドミニスター)・鉄炮博三郎その人なのである。 2018.8.18

音頭師/ 鉄砲博三郎
 (MISORA / ONDO NOW MRON-3002)
半年前の旧稿です。いま手元にはアルバム一枚分の鉄砲博三郎師未発表音源がある。この舞台音頭「ケレン詠み」のベーシックトラックは永年手つかずのまま、ずっと眠らせてきたものだ。博三郎師は今年で御齢90。よし、今年こそはこの音源を仕上げよう。地元河内勢&オフノート精鋭合作によるわれらがオンドシンジケートを復活させたい。大衆藝能最深部の鼓動をづたたび喚び起こし、森羅万象を励起しながらいまを揺らし踊らすのだ。そしてその指揮官はかならず音頭師・鉄砲博三郎師、その人であらねばならない。 2019.2.13


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