カートをみる マイページへログイン ご利用案内 お問い合せ お客様の声 サイトマップ
RSS
OFF NOTE CD NET SHOP
off note  DISC AKABANA  Katyusha MISORA RECORDS
〈オフノート/ディスク・アカバナー/華宙舎/ミソラレコード/邑楽舎〉CD通信販売
INFO
TEL 03-5660-6498   MAIL info@offnote.org 
[お支払方法]
郵便振替・銀行振込・代金引換・クレジットカード・コンビニ・電子決済
送料無料

記忘記 note/off note 2019-04-17



毎度毎度で恐縮ですが半年前のMEMO。本作はわが同時代音楽・音盤制作事始めに措かれ、リリースからおよそ28年もの時間が経過しているから当時のことを断片的にしか思い出すことができない。録音前にシバさんと相棒二人・闇のヘルペスの案内で、ドラムス・菊池隆さん営むカレー店(相模原だったか?)を訪ねてとびっきり美味いカレーをご馳走になりながら親しくお話しさせていただいたこと、惜しくも昨年11月に逝去されたテナーサックス・片山広明さんが缶チューハイ二、三本入ったコンビニ袋をブラ提げてスタジオにやってこられたこと、録音作業終了後はプロデューサー・梅津和時さんご紹介の居酒屋(武蔵小金井だったか?)で豪華な舟盛りに舌鼓を打ちながら盛大に打ち上げたこと(メチャクチャ安価で美味かった!)…音楽の内容とは直接関係ないことども(食いもの飲みもの)ばかりがしきりに思い出されるのは当時(いまもだが)ズブの素人だったから仕方ないけれども、ここに掲げた切れ切れの回想が悉くDUB(ドクトル梅津バンド)メンバーの方々としがらんでいることに本作のバックボーンというか、90年代初頭の同時代的心象風景がくっきりと浮かび上がってくるようだ。当時のわたしにとって、DUBを筆頭とする梅津一派が捻り出す音塊は最もラディカルでリアルに響いていたはずである。先行するDENGER(忌野清志郎+DUB)の試行にも大きな刺戟を受けたにちがいいない。リアルジャズの衝迫力をもって、シバが醸すブルーズフィーリングをさらに賦活し、ブルーズインパルスへと転嫁(点火)することが本作制作に課せられた至上命令だったようにおもう。その実現のために梅津さんが揃えてくれた最強布陣は打ち上げの舟盛りよりもさらにさらに豪勢だったことは述べるまでもない。実際に録音作業の間中、駆け出しのひよっこでまだ何も知らないこのおれがこんな贅沢な思いに浸っていいのだろうか、と何度おもったことか。梅津さんら百戦錬磨の手練たちが手を変え品を換え繰り出すめくるめく音群、タフなビートに包まれてしんじつ幸せだった…。ウソかマコトか、その成果は本作を聴いておたしかめいただくよりないが、極私的にはわが同時代音楽の端緒、音楽制作の事始めに「ブルーズ・エクスペリエンス」とでもよぶべき尖端的音楽実験に関われたことは稀な幸運だったと憚らず銘記しておこう。いまいちど、こんな実験ができるだろうか。否、何度でも! 2019.4.17

MEMO 帰還 2018

1992年に制作されたまぼろしのアルバムの覆刻である。
1972年デビュー以来、シバはトラディショナルブルーズを下敷きにしながら単なるコピーに終らず、その土台の上に同時代の心象風景をくっきりとトレースして独自の世界を作り得た真のオリジネイターの一人である。シバはすぐれた歌手であるばかりでなく、三橋誠(三橋乙耶)として70年代の劇画表現に一時代を画した『ガロ』を主戦場に自作品を発表する漫画家でもあったから、そのうたうブルーズにはそこから得ただろう独特の情感が滲む。『ガロ』を彩る作家たちの中でも私小説的作風で知られる安部慎一や鈴木翁二とはまさに同世代の友人同志であり、若き日にアシスタントを務めた永島慎二や、つげ義春・忠男兄弟らの名作群にも大きな影響を受けたようにみえる。漫画表現を従来の「子供向けコミック」から解放し、そこに深い陰翳を刻み「文学作品」に比肩するものにしたのはこれらの作家の粒々辛苦の賜だが、シバは『ガロ』にあつめられた同時代の覚書を自身のブルーズやバラッドのなかに投影して生き生きと蘇らすことに成功した。シバのコトバがいつも映像を伴ってあらわれるのは、漫画執筆で鍛えたこのイメージの喚起力によるものにちがいない。『青い空の日』『コスモスによせる』『夜のこちら』初期3作にはシバのブルーズフィーリングの深化と進化の過程が克明に記録されているだろう。
極私的な回想で恐縮だが、高校生のときに出会った第三作『夜のこちら』には鋭く胸を抉られた。僭越ながら「家路」や「思い出」とりわけ「埃風」にシバという歌手が到達した大きな達成をみたのである。いまでも、これらの唄はわが胸中を離れたことはけっしてない。
そんなわたしがどうして前掲の名盤三作につづく新作に携わるようになったのか、いまとなってはまるで思い出すことができない。たしか、わたしがシバ本人に電話して新作の制作を打診したようにおもうが、それも定かではない。当時のわたしは仲間たちとディスクアカバナーという沖縄専門レーベルを立ち上げ、ネーネーズ『IKAWU』、知名定男『島うた』をリリースしたばかりだったから、傍から見てもシバの新作企画は奇異に映ったにちがいない。でも、わたしの脳裏には「埃風」の唄声が、なぜかつげ忠男「無頼漢モノ」の映像を伴って大きく鳴りつづけていたから、周囲の雑音はまったく耳に届かなかったのだろう。
そんなある日だ、一本のデモテープがシバ本人から届いたのは。もちろん、そこに収められていたのは本作収録の唄たちだったけれども、演奏スタイルは従来のシバ本人のギターとハープだけではなく、直角中根(ギター)と円周率松枝(ベース)、「闇のヘルペス」未知のミュージシャン二人が全面サポートしていたのである。届いたテープを聴き出した途端、ここに並んだ唄たちが「おれたちの身丈に合った音を」と切実に訴える声が聞こえてきた。本人に確認すると「まさに然り」と言う。当時、わたしは音楽家・梅津和時さんと共に沖縄音楽をめぐる新たなプロジェクトに着手しようとしていたからプロデュースを任せたらどうかと考えて、そのことをシバ・梅津双方に確認すると二つ返事の快諾をいただくことができた。とりわけ、直角中根と円周率松枝の二人が喜んでくれたことが印象的だった。二人はわたしとほぼ同年齢、音楽の趣味嗜好もより近かったのである。
とまれ、主に梅津和時さんが揃えてくれた豪華なラインナップで録音に臨むことになった。スタジオに入り、梅津一派のジャジーなブルーズ魂とシバのメタブルーズとがガチンコでぶつかった瞬間、デモテープでは隠れていたブルーズインパルスが火花を散らして烈しく炸裂したのである。焔にガソリンをぶちまけるようなその攻防の態様はディスクに記録された通りだ(乞うご一聴)。
巷間、オーソドックスなフォークファンにとって、オフノート作品はあまり評判がよろしくない、と聞く。その理由を問うと、管楽器を多用するからなんだそうで、フォークとホーン&ブラスは「水と油」と考えるリスナーは少なくないようだ。だが、かならずしも歌い手たちはそうおもってはいない。ホーンがあれば、自身の声をもっと遠くへ届けられるからだ。未だ先入観を棄てきれない方にぜひ本作を聴いていただけたらとおもう。きっと、シバのメタブルーズの身丈に合った衣裳はこれだ!とおもっていただけるだろう。
本作は「楽曲著作権」をめぐって関係者間に感情の齟齬があり、永らく「お蔵入り」の不遇を託ってきたがときの流れと共にそれらもすっかり解消されて、ようやく昨年ふたたび、日の目を見ることができた。「四半世紀ぶりの帰還!」とはその際にわたしがつけたベタな惹句。 2018.8.22


コメント

[コメント記入欄はこちら]

コメントはまだありません。
名前:
URL:
コメント:
 

ページトップへ