ソング・リサイクル。 70年代、うたの豊饒を自らの歩みに重ねていまに蘇らせた奇蹟の力業。
地下から滾々と湧き出す叛乱の音群がポップス正史を塗りかえる。鬼才が綴る音のクロニクル。
孤高の音楽家、渡辺勝が70年代の日本のフォーク&ロック黎明期の名曲を多彩なゲストを迎えてまったく独自の解釈でまとめたオリジナルカバーアルバム。日本のインディーズの先駆をなした「URC」。本作が「URC」出身のアーティストの作品を取り上げているのは単なる偶然ではない。渡辺勝、その人が音楽現場の参加していたか、あるいはその音楽家たちと深く関わっていたためである。渡辺勝はURCの屋台骨を支える音楽的支柱の一人だったのである。陰の立役者にしてはじめて可能となった、枠組みに括られたこの国の「ポップス史」を「叛史」へと塗り換える作業と、現在と未来を生きる「音の力」の方に力ずくで引き戻そうとする不屈の闘争。過去の作品が単なる「リバイバル」「懐古趣味」ではなく、サイケな装いを凝らしていままさにに蘇る、地下から滾々と湧き出す叛乱の音群となって魔界転生するのだ。 2003年作品
収録曲 :
1. 愛する人へ(1970 / 岡林信康)
2.自由への長い旅(1970 / 岡林信康)
3. 悩み多き者よ(1970 / 斉藤哲夫)
4. 偶成(1972 / 加川良)
5. 鎮静剤(1972 / 加川良)
6. 冬の祈り1(1970 / あがた森魚)
7.冬が来る(1970/あがた森魚)
8. 神さまなんているのかい(1970 / あがた森魚)
9. 黒の雨(1970 / あがた森魚)
10. 冬の祈り2(1970 / あがた森魚)
11. センチメンタル通り(1972 / はちみつぱい)
12. 追放の唄(1969 / 休みの国)
13. 夕焼け地帯(1978 / 休みの国)
14. オールライト(1978 / 休みの国)
15. 朝顔(1969 / 早川義夫)
16. 埋葬(1969 / 早川義夫)
17. ハッティ・キャロルの淋しい死(1970 / あがた森魚)
Musicians :
渡辺勝 Vocal, Gut Guitar, Electric Guitar, Organ,Piano, ElectricPiano, Accordion, Ukulele, Chorus
イマイアキノブ Vocal, Electric Guitar, Acoustic Guitar, Piano, Chorus
オクノ修 Vocal, Acoustic Guitar
知念良吉 Vocal
鈴木翁二 Vocal
石垣勝治 Vocal
ひがしのひとし Vocal
中川五郎 Vocal
嘉手苅林次 Vocal,Violin
津波恒徳 Vocal
岩井信幸 Vocal, Chorus
宮薗あき子 memory go round, Chorus
國仲勝男 Electric Bass, Oud, Gut Guitar
船戸博史 Contrabass
つの犬 Drums, Percussion
関島岳郎 Tuba, Trumpet, Recorder, Chorus
中尾勘二 Klarinette, Tenor Saxophone, Trombone, Cymbal, ゴロス
川下直広 Tenor&Soprano Saxophone, Flat Mandolin, Chorus
向島ゆり子 Violin, Pianica,Piano, Chorus
山我静 Analog Synthsizer, Chorus
松村孝之 Percussion ,Snare Drums
[試聴]
1.愛する人へ(1970/岡林信康)
■ 商品説明
孤高の音楽家、渡辺勝が70年代の日本のフォーク&ロック黎明期の名曲を多彩なゲストを迎えてまったく独自の解釈でまとめたオリジナルカバーアルバム。 70年代、うたの豊饒を自らの歩みに重ねていまに蘇らせた奇蹟の力業。まさにソング・リサイクル。地下から滾々と湧き出す叛乱の音群が魔界転生して、この国のポップス正史を塗りかえる。鬼才が綴る音のクロニクル。
■ 商品仕様
製品名 | アンダーグラウンド・リサイクル / 渡辺勝 |
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型番 | on-44 |
JANコード | 4571258150442 |
メーカー | オフノート |
製造年 | 2003年 |
MEMO アンダーグラウンド・リサイクル 2018
本作は日本フォーク/ロック黎明期を飾る名曲をまとめたカバー集である。主に往年のURC作品からの選曲が目立つが、そこはアルバムタイトル「Undergrounf Re-Cycle」に表した通りだ。口はばったいが、世間に数多ある凡百のカバーアルバムと本作が一線を画すのは、本作の主役・渡辺勝がここで採り上げられた歌手たちのいずれにもサウンドプロダクションで大きく貢献してきた点である。その意味で本作は鬼才渡辺勝の自分史に留まらず、日本フォーク/ロック創世の裏面史になっているだろう。正史は常に勝者の歴史であって、そこからこぼれるのはいつも「無告の大衆」だった。染み付いた歴史認識の手癖はこの国のフォーク/ロックを触るときもまるで変わらない。ほんの一部の真摯な研究を除けば、概ね「歌手」のみがクローズアップされ、その外側はすべて切り棄てられることに終始しただろう。その手抜きと定見のない犯罪的だらしなさが、日本の大衆音楽を小さく狭いものにした。
ここでURC等初期インディーズが採用した音楽制作のプロセスを簡単に振り返っておこうか。まずは歌手たちが描いたデッサンがあり、それを熟練の職人たちが細密画へと仕上げる、さらに出来上がった作品をマスプリントする版元がいて、はじめて音楽は世に出ることができる。その中でも取り分け、渡辺勝は音の匠として最重要の役割を果たしながら、その仕事ぶりを顧みられる機会はついになかっただろう。日本フォーク/ロックを陰で支え、賦活してきた真の立役者は「裏方」に徹した渡辺勝のような腕利きの職人たちではないのか、という想いをより深くしていったのである。
だが、当の渡辺勝はちがった。裏方に追いやられたとか蟄居させられたという負い目やコンプレックスは微塵もなく、臆せず動じず、ただひたすら自身の音楽をこしらえ磨き奏でてきた。また、鬼才らしく、託った不遇をも自身の成長の糧に変え、「地下」の養分をも貪欲に吸い取って生き抜いてきただろう。誰と誰とは言わない。ひとたび、時代の表層に浮かび、「地上の星」に輝いたものたちは幾星霜を重ねるなかで悉くかつてのひかりを喪ってゆく。もっと端的に言えば、往年のフォーク/ロックのスターたちが失速していく現在、渡辺勝一人がうたいたい唄をうたって、輝きつづけているのである。うたう詩人・三上寛の炯眼が鋭く見抜いたように、そこには「素浪人の風格」が漂う。そしてひとたび、鞘を払えば磨き抜かれた名刀の切れ味冴えわたり、瓜を切るがごとくである。本作もそんな渡辺勝が剣の遊び(すさび)を軽く揮っただけかもしれぬ。が、その一太刀、剣の遊びこそがこの国の大衆音楽正史の虚妄を暴き弾劾する「叛史」に換え、この国のフォークロックを叛乱する地下音楽に変えたのである。このディスクに記録された其処彼処に、時間の堆積にじっと堪えながら「時の時」を待ちつづけた鬼才の「閃き」を感じるのである。巌窟王・渡辺勝。待て、そして希望せよ。 2018.8.20