小さな島の大きな記憶<大工哲弘が朗々とうたうもうひとつの近代史。明治御一新・大正デモクラシー・昭和大恐慌・満州国を経てアメリカ占領・「本土」復帰――、南島ににふりつもった唄たちが紡ぐ歴史のオフノート。ソウルフラワー・モノノケサミットをはじめ多くのフォロワーを生んだ記念すべきオフノート第一弾。…そして2024年、歴史的名盤がリマスターとデジパック仕様で装い新たに再復活。八重山諸島に漂着したヤマトうたがジンタサウンドにのって鮮やかに甦る。 梅津和時プロデュース 1994年作品品
1.マクラム道路
2.カチューシャの唄
3.ラッパ節
4.満洲想えば
5.満洲娘
6.奄美小唄
7. 籠の鳥
8.東京節
9.書生節
10.汗水節
11.あきらめろ
12. 安里屋ユンタ
13.沖縄を返せ
14.新港節
15.さよなら港
16.川平線風景
大工哲弘 (唄 三絃 笛 太鼓)
梅津和時 (sax, clarinet, etc)
大熊亘 (accordion, clarinet, etc)
石川浩司 (percussion, 囃子 etc)
関島岳郎 (tuba, trombone)
中尾勘二 (sax, trombone, etc)
向島ゆり子 (violin, accordion)
大工苗子 (唄 琴 囃子)
嵩本由起子 (囃子)
長谷川八千代 (ゴロス)
高田光子 (チンドン)
Produced by 梅津和時
[試聴]
2.カチューシャの唄:
■ 商品説明
小さな島の大きな記憶<大工哲弘が朗々とうたうもうひとつの近代史。明治御一新・大正デモクラシー・昭和大恐慌・満州国を経てアメリカ占領・「本土」復帰――、南島ににふりつもった唄たちが紡ぐ歴史のオフノート。ソウルフラワー・モノノケサミットをはじめ多くのフォロワーを生んだ記念すべきオフノート第一弾。…そして2024年、歴史的名盤がリマスターとデジパック仕様で装い新たに再復活。八重山諸島に漂着したヤマトうたがジンタサウンドにのって鮮やかに甦る。
■ 商品仕様
製品名 | ウチナージンタ / 大工哲弘 |
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型番 | on-1 |
JANコード | 4571258150015 |
メーカー | オフノート |
製造年 | 1994年 |
MEMO OKINAWA JINTA 2018
1994年リリースした記念すべきオフノート第一弾である。かねてよりわたしは本作を「出会いの音楽」と綴ってきたが、リリースよりほぼ四半世紀ちかくを迎える現在だからこそ、その「出会い」の中身をいますこし具にみておこうか。
まず第一に「ジンタ」は西洋音楽の身体的受容が生み出した和洋折衷音楽であり「合いの子音楽」であるという点に注目しておこう。合いの子音楽でもうひとつ浮かぶのは「チンドン」だが、「チンドン」が和洋バランスの「和」に傾斜したものなら、「ジンタ」は「洋」に比重が置かれるだろう。この合いの子の双生児は西洋と東洋のファーストコンタクト、異種交配から胚胎した複合リズムであり、日本大衆歌謡の原基をなす律動である。まず、わたしたちはここに着目した。
そして、次に重要となったのは、ヤマトとウチナーをも吞み込んだ「近代」という歴史時間である。世界を包んだ「ファシズム」の潮流はこの国の「近代」とシンクロしながら、同時に沖縄も攫ってゆくが、その仮装された「近代」という虚構の根底には瀕死寸前ではあったけれども琉球庶民が営々と紡いできた「島時間」が微かに息づいていて、その二つの時間の衝突「タイムラグ」を同時代の「ラグタイム」の契機にできないかと考えたのである。
さらに注目すべき第三点はここに収録された唄の全てが「ヤマトグチ」=標準語でうたわれている点である。むろん、これは島を洗った近代化の波が運んできたものであることは言うまでもないだろう。「富国強兵」明治エネルギー政策の一端を担った「西表炭鉱」で徴用された坑夫たちがもたらした俗謡にはじまり、出稼ぎ移民たちが本土から持ち運んだ流行り唄、出征兵士たちがつたえた軍国・植民地歌謡といった具合に、これらの唄は「大東亜共栄圏」の夢まぼろしに殉じた沖縄庶民のアンガージュを如実に物語るだろう。そしてこの小さな島にあつめられた覚書のなかにこそ、この国の歴史をまるごと異化する豊穣な記憶が秘匿されていたのである。その匿された「歴史のオフノート」を現在に健在化することが、まず最初のわたしたちの仕事となった。きっと制作に携ってくれた音楽家たちにとっても本作は新たな「同時代音楽」創造の第一歩であり「出会いの音楽」であったにちがいない。本作によってこれまで見られなかった景色が見られ、未知の友と数えきれぬほどの出会いを果たすことができた。わたしにとっても『ウチナージンタ』はエヴァグリーン、「出会いの音楽」なのである。
2018.8.13 神谷一義